[心得8]でも書きましたが、「患者ではなく、検査を治療する医者」ってほんとうに多いですね。 ぼくは感染症屋さんですけれど、CRPという検査があります。これは体の炎症を測る検査で、なぜか日本では大人気。みなさんも、主治医の先生が、CRPが上がってるの、下がってるの説明しているの、聞いたことがありません? CRPは肝臓が作っているタンパク質なんですけどね、普段はアルブミンを作ってるんです、肝臓。で、感染症とか他の病気になった時は、「アルブミンなんか作ってられるか」と非常事態宣言が出て、代わりに作られるのがこのCRP。 で、病気が治ってしまっても、急に肝臓も「アルブミン・モード」には戻れません。しばらくはCRPをチョロチョロ作るクールダウンモードになります。そのチョロチョロのCRPが許せない!という医者が多いんです。患者さん元気なんだから、もう抗生物質やめれば?と言っているのに、「いやいや、CRPがまだなくなっていないから、もう少し、もう少しだけ抗生物質を」と血走った目でぼくに訴えます。こうなると、この抗生物質、ほとんど主治医に対する抗不安薬ですな。 血糖値も、コレステロールも、尿酸値も、CRPも治療の目標「そのもの」ではありません。それは、あくまでも測定項目のひとつにすぎないのです。 大事なのは、病気が治るか、痛みや苦しみがおさまるか、死なないか、、、といった、患者さんにとって本当に大切な項目です。僕らの業界用語では、これを「アウトカム」と言います。アウトカム、、、すなわち、治療の目標が患者さんに寄り添う、まっとうな目標でなければならないのです。血液検査や、画像検査を正常化するのは、病気の治療の結果生じる(かもしれない)副産物ですが、血液検査そのもの、画像検査そのものは治療の目標でもなんでもありません。 尿酸値の異常「そのもの」を治療しても意味は小さく、その薬の副作用のリスクが(相対的に)大きくなっちゃう、という話はしましたね。似たような例はあちこちにあります。それをこれからも説明していこうと思います。それから、どうして日本の医者は患者に寄り添ったアウトカムから医療を考えられないんだろう、という謎解きも、これからやっていこうと思います。ちゃんと理由があるんですよ。この連載も今後の展開に要注目、です。
via georgebest1969.typepad.jp